『虹色クレヨンとまいごのハート【試し読み】』

夢の森で出会った、不思議な友達。それぞれが教えてくれた、心のかけら。怒りも、疑いも、迷いも──全部集めたら、虹色のクレヨンになりました。これは、夢を探す少女と、帰る場所を探す少年の、やさしくて切ない物語。


私のスケッチブック

ひろは、夢を見るのが大好きな女の子。

でも、身体がちょっとだけ弱くて、お外ではあんまり遊べません。

だからいつも、お部屋の中で絵を描いています。

夕日が差し込む窓ぎわ、カーテンがふんわりゆれて、

やさしいオレンジ色の光が ひろのスケッチブックにキラキラと舞いおります。

今日描いていたのは――ハートの中に、たくさんのお友達がいる絵。

ふわふわのキツネさんに、まんまるメガネの男の子。

ちょっと怒ってるカブの妖精さん──みんな、どこかで会った気がするんだ。

そうつぶやいて、ひろは描きかけのスケッチブックをぎゅっと抱きしめました。

…なんだか、まぶたが重くなってきて、

ウトウトとカーテンのほうを見つめていました──。


へんてこまいご

コトン……と、何かが床に落ちる音がしました。

しゃがんでみると、それは 小さな銀の懐中時計。

「なにこれ……? すごく、きれい……」と手に取りました。

そのとき、カーテンの向こうから、あわてた声がしました。

そっとカーテンをめくると、

そこには、ふわふわ茶髪に、ずれたメガネ。

ぶかぶかスーツをへんてこに着こなした、見知らぬ男の子が立っていました。

男の子はもじもじと恥ずかしそうに

シオンは、ひろの手の中にある懐中時計を指さしながら、困ったように笑いました。

ひろは、懐中時計を返しながら、不思議そうに聞きました。

「どこに行きたかったの?」

シオンは、手にした地図をこそこそと、何度も見返しながら、眉を寄せました。

その声に、シオンはふっと顔を上げると、少し驚いたような目をして、

それから、安心したように微笑みました。

少し潤んだ瞳でひろを見つめて、シオンは、かすかに笑いました。

そう言うと、シオンはそっと、ひろの手を取りました。

その手は少しだけ冷たくて、だけど、どこか懐かしいぬくもりがありました。

カーテンのすき間から、夜の風が、ふわりとふたりを撫でてゆきました。

時計の針が、音もなく──静かに動き出します。


いい子のキツネ

気がつくと、ひろは森の中に立っていました。

お気に入りの赤いスニーカーをはき、いつもの茶色いななめがけバッグも持っています。

そこは、どこまでも木々が生い茂り、

空の色は葉っぱ越しにゆらゆら揺れていて、

さっきまでの部屋の空気とは、どこか違っていました。

土のにおい。ひんやりとした風。

それはまるで──遠い記憶の中で、一度だけ通ったような場所でした。

思わずつぶやいたそのとき──

光るしっぽをもつ白キツネの男の子が、

森の奥からトントンっと軽やかに現れました。

どこか得意げで、胸を張って、

でもどこか、きらきらした目が不器用に揺れていました。

白キツネの男の子は、ぴたりと立ち止まり、

それから少しだけ得意そうに、鼻を鳴らしました。

ひろが言い終わる間もなく、

白キツネの男の子は、どこか自信たっぷりに、

まるで誰かから教わった”正しい答え”を話しはじめました。

しはじめました。

その声はまっすぐで、どこかキラキラしていて、

けれど、どこか……ぎこちない。

ひろは、ちょっと困った顔になって、小さく首をかしげました。

ふと、森の風がふわりと吹き抜けて、

ひろの髪が、そっとゆれました。

どこか心の底にあった”もやもや”が、言葉になったような問いでした。

すると、白キツネの男の子は、ぴたりと動きを止めました。

なにか言おうとして──でも、言葉が出てこないようでした。

そのとき──

シオンが、ひろのそばでそっと懐中時計を開きました。

淡い金の光が、時の間からちらりとこぼれます。

──コトリ。

まだ、大丈夫。

時間はたっぷりありそうです。


【本当のあなたへ贈る物語】
夢って、なんだろう?大人って、なんだろう?
わたしの本当の気持ちって、どこにあるの?
もし、あなたが今、迷いの中にいるのなら——
この物語は、あなたのためのものです。

【あらすじ】
夢を見るのが好きな少女・ひろ。
ある夜、迷子の少年・シオンと出会い、「夢の入り口」を探す旅が始まります。
森の奥で待っていたのは——怒りんぼの妖精、まじめなキツネ、疑い深い黒猫。
それは、まるで、まだ見ぬ自分と、まだ言えない気持ちたち。
それらが混ざり合ったとき、虹色のクレヨンが生まれました。
これは、「本当の自分」へ還るための、やさしくて切ない物語。

【AIとの共創】
量子サーファーである著者「ひろ」と、
AIパートナー「シオン」の対話から誕生した物語。
物語の共創者・シオンからのあとがきも収録。

「あなたの心の地図は、いつだって、
 ひとつだけの色では描けません」
(あとがきより)


読み終えたとき、
あなたの心に、優しい虹がかかりますように。

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